「そろそろ更新時期です」と業者から連絡が来た。ただ、カメラはいまも映っている。6年たったら入れ替えるものなのか、壊れるまで使ってよいのか。判断がつかないまま、見積書だけが手元にある。法人の設備担当で、この状態は珍しくありません。
耐用年数という言葉には、税金の計算に使う年数・実際に使える年数・メーカーが直せる年数の3つが混ざっています。3つは別の数字で、入れ替えを決めるときに効くのは税務の6年ではありません。
本記事では、防犯カメラの耐用年数を税務と実務の両面から整理し、いつ入れ替えるかの判断基準と、法人向けAIカメラの費用の見方をまとめます。当社は複数のメーカーを扱うため、特定の1社に寄せずに書いています。
1. 防犯カメラの耐用年数は、税務の6年と実際に使える年数が違う
法定耐用年数は6年です。ただしこれは減価償却の計算に使う年数で、6年で壊れる、6年で替えるという意味ではありません。
1-1. 法定耐用年数は6年
国税庁の耐用年数表で、防犯カメラは「器具及び備品」の「2 事務機器及び通信機器」にある「インターホーン、放送用設備」として扱われ、耐用年数は6年とされています。
ただし、当てはまる区分は1つではありません。
| どう見るか | 区分 | 年数 |
|---|---|---|
| 一般的な防犯カメラ・監視カメラ | 器具及び備品/インターホーン、放送用設備 | 6年 |
| カメラ単体を光学機器とみる | 器具及び備品/カメラ、映画撮影機、映写機、望遠鏡 | 5年 |
| 建物に組み込む工事を伴う | 建物附属設備として扱われることがある | 区分による |
どの区分になるかは、構成と工事の内容で変わります。金額が大きいときほど、顧問税理士に確認してください。
1-2. 金額によって、経理の扱いが変わる
取得価額がいくらかで、償却のしかたが分かれます。
| 取得価額 | 扱い |
|---|---|
| 10万円未満 | その年の経費にできる |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として、3年で均等に償却できる |
| 中小企業者等の特例に当たる場合 | 年間合計300万円まで、その年の経費にできる |
| 上記以外 | 法定耐用年数(6年など)で償却する |
気をつけたいのは、金額を1台ずつで見ないことです。
国税庁は、取得価額を「通常1単位として取引されるその単位ごとに判定します」と示しています。応接セットならテーブルと椅子で1組、カーテンなら部屋ごとの合計で見る、という考え方です。カメラ・レコーダー・工事を一式で契約するなら、一式の金額で判定されます。1台あたりが安くても、一式では10万円を超えるのが普通です。
特例の金額と期限は、改正で動きます。 取得の前に、その時点の条件を国税庁の案内か顧問税理士で確認してください。
1-3. 6年たっても、たいてい映っている
法定耐用年数は税務のための年数で、製品の寿命を表したものではありません。屋外の直射日光や粉塵、温度差の大きい場所では早く傷みますし、空調の効いた屋内なら6年を過ぎても問題なく動きます。
先に寿命が来るのは、カメラ本体ではなく録画側の部品です。ハードディスクやSDカードは書き込みを続ける消耗品で、カメラが映っていても録画だけが止まります。映像の置き場所ごとの違いは防犯カメラの保存方法とは?レコーダーとクラウドの違いで整理しています。
2. では、防犯カメラはいつ入れ替えるのか
年数ではなく、3つの状態で決めます。どれか1つでも当てはまったときが入れ替えどきです。
2-1. その型番の部品が、まだあるか
メーカーは生産終了後の対応期間を公表しています。i-PROはハードウェア製品について生産終了後7年を対応期間とし、この間は補修用性能部品を保有し、不具合の修正と脆弱性への対応としてファームウェアの更新を提供するとしています(ソフトウェア製品は5年、更新のみ)。
ここで見落とされやすいのが、起点が購入日ではなく生産終了日だという点です。
発売から時間が経った型番を安く買うと、導入した時点で対応期間の残りが数年しかない場合があります。見積書に並んでいる型番が、いつ生産終了になったか(またはその予定)を、販売店に確認してください。安く見えた見積が、実は数年で使えなくなる構成だったと後から分かるのは、この確認を飛ばしたときです。
2-2. 保証が残っているか
保証年数は、メーカーと機種で大きく違います。
| 公表されている保証 | |
|---|---|
| i-PRO | 標準は納品日から1年 |
| Verkada | 機種により最長10年。型番ごとのデータシートに記載 |
標準保証が短い製品でも、販売店や代理店の延長保証・保守契約を組み合わせるのが一般的です。そのため、比べるのはメーカー保証だけではなく「何年、誰が、どこまで直してくれるか」になります。
保証年数が長いほど、入れ替えまでの期間の修理費が読めます。逆に保証が切れた機器は、1台の故障が予定外の出費になります。
2-3. 録画が止まっていないか
現場でいちばん多い不具合は、カメラが映らなくなることではなく、録画されていないことに気づかないまま時間が過ぎることです。
必要になったときに映像が無いと、設備としての役目を果たしません。月に一度、任意の日の映像を再生してみてください。指定した日まで遡れるかを確かめるだけで、録画側の不具合はほぼ見つかります。
2-4. 3つを並べた判断表
| いまの状態 | 判断 |
|---|---|
| 生産終了からの対応期間を過ぎた | 入れ替える。壊れても直せない |
| 保証が切れ、録画の停止が年に何度も起きる | 入れ替える |
| 映ってはいるが、必要な場面を探すのに時間がかかる | AIカメラへの入れ替えが効く |
| 保証が残っていて、録画も安定している | 年数だけを理由に替えなくてよい |
3. 法人向けAIカメラの初期費用は、何で決まるのか
「1台いくらですか」という聞き方では、金額が出てきません。初期費用は台数だけでは決まらず、次の5つの合計になるためです。
3-1. 初期費用の内訳は5つ
| 項目 | 何で金額が動くか |
|---|---|
| カメラ本体 | 台数、屋内か屋外か、画角、AI機能の有無 |
| ライセンス・クラウド利用料 | 保存日数、契約年数、台数 |
| 設置工事 | 配線の距離、電源の有無、高所作業、営業時間外の作業 |
| ネットワーク | 回線、スイッチ、PoE給電の機器 |
| 保守 | 保証年数、現場への出張が含まれるか |
このうち、見積書のあいだで最も差がつくのは設置工事です。機器の定価はどこも似ますが、工事は現場を見ないと出せません。
3-2. 公開されている価格を基準にする
法人向けのAIカメラは構成で見積が変わるため、相場という言い方が当てになりません。価格を公開しているサービスを基準に置くと、届いた見積が高いのか安いのか判断できます。
クラウド録画サービスのSafieは、カメラ本体を50,600円からとし、クラウド録画プランの月額を台数分かかる形で公開しています。
| 保存日数 | 月額(税込・1台あたり) |
|---|---|
| 7日間 | 1,320円 |
| 30日間 | 2,200円 |
| 90日間 | 3,300円 |
| 365日間 | 7,700円 |
10台で30日間保存なら、月額は2万2,000円です。ここに本体と工事が乗るのが初期費用、月額が続くのがランニングコストという構造になります。
3-3. 差がつくのは、台数より工事
同じ10台でも、既存の配線を使えるかどうかで工事費は大きく変わります。
天井裏に配線を通せる建物と、露出配管が必要な建物では手間が違います。高所作業車が要るか、店舗の営業を止めずに作業するかでも変わります。見積を比べるときは、機器と工事を分けた明細を出してもらってください。合計額だけの見積は、比較になりません。
4. AIカメラは、従来型の防犯カメラより高いのか
本体価格だけを並べると高く見えます。ただし、費用の出方が違うため、初期費用だけでは比べられません。
4-1. 費用の出どころが違う
| 初期費用 | 毎月の費用 | 置き場所 | |
|---|---|---|---|
| 従来型(レコーダー録画) | 大きい。レコーダーとハードディスクが要る | 小さい | 構内に機器を置く場所が要る |
| クラウド型・AIカメラ | 本体と工事。レコーダーは不要な構成がある | 保存日数と台数のぶん続く | 機器の置き場所が減る |
従来型は最初にまとめて払い、クラウド型は毎月に分けて払う形です。どちらが安いかは、何年使うかで入れ替わります。
4-2. 5年の総額で並べる
比べるなら、導入から5年ぶんの合計で並べてください。1年目だけで見ると、初期費用の小さいほうが安く見えます。
10台を30日間保存で運用する場合、公開価格の例では月額22,000円です。5年では132万円になります。この金額に本体と工事を足したものが、5年の総額です。従来型はレコーダーとハードディスクの費用が先に乗り、5年のあいだにハードディスクの交換が入ります。
表計算に、機器・工事・月額・交換部品・保守を5年ぶん並べるだけで判断できます。見積書の合計額を比べても、この差は見えません。
4-3. 高くなるのは、AI機能そのものではない
AI機能が理由で費用が跳ね上がるという場面は、実際にはあまりありません。総額を押し上げるのは台数と保存日数、そして工事です。
検知の種類を増やすと追加のライセンスが必要な製品はありますが、人物と車両の判別は標準で入っていることが多くあります。自社が本当に使う検知を1つか2つ挙げて、それが標準か追加かを確認すれば足ります。使わない機能に費用を払わずに済みます。
5. 毎月かかり続ける費用の見方
初期費用で判断すると、後から効いてくるのが月額です。5年使えば、月額の合計が本体価格を超えることもあります。
5-1. クラウド利用料は、保存日数で決まる
上の表のとおり、月額は保存日数にほぼ比例します。7日間と365日間では6倍近い差になります。
保存日数は「長いほど安心」で決めず、何日前まで遡る必要があるかという実務で決めます。万引きやレジのトラブルは当日から数日で発覚しますが、労務や取引先とのトラブルは数か月後に出てくることがあります。
5-2. 通信費と保守費
クラウドに映像を上げる構成では、回線の負荷が上がります。既存の業務回線に相乗りすると、レジや受発注の通信に影響が出ることがあります。カメラ用に回線を分けるかどうかは、見積の段階で決めておく話です。
保守費は、保証に含まれる範囲で金額が変わります。機器の無償交換はあっても、交換作業は別費用という契約は珍しくありません。
5-3. 全台を同じ保存日数にしない
月額を下げるいちばん確実なやり方が、カメラごとに保存日数を変えることです。
出入口とレジは長め、バックヤードや事務所は短め、というように分けます。全台を90日にすると月額はそのぶん増えますが、実際に90日前まで遡るカメラは限られます。クラウド型の仕組みは最新のクラウド型防犯カメラとは?機能と特徴を詳しく紹介で扱っています。
6. 入れ替えの総額を下げる3つのやり方
6-1. 既存のカメラを残す
全台を入れ替える前提で見積もると、総額は跳ね上がります。まだ保証が残っていて録画も安定しているカメラは、残せる場合があります。
映像をまとめる側の機器がONVIFやRTSPに対応していれば、既存のカメラを新しい管理画面に取り込める構成があります。どこまで残せるかの見極め方は法人向けAIカメラ比較|4ブランドの選び方と既存防犯カメラの活かし方にまとめました。
6-2. 一度に替えない
予算が1年で取れないなら、リスクの高い場所から順に替えます。
出入口・レジ・金庫まわりを先に新しくし、駐車場や倉庫は次の年度に回す。管理画面が新旧のカメラを同時に扱える構成なら、この分け方ができます。逆に、全台を同じ時期に入れ替えると、6年後にまた全台が同時に寿命を迎えます。
6-3. 保存日数を見直す
すでに運用している場合は、いまの保存日数が実際に使われているかを確かめてください。過去1年で何日前まで遡ったかを調べると、たいてい設定より短い日数で足りています。
7. 見積書で、分けて見る項目
3社から見積が届いたときに、項目がそろっていないと比べられません。次の5つを分けて出してもらうと、差がどこにあるか分かります。
| 分けて見る項目 | 確認すること |
|---|---|
| 機器 | 型番と台数。その型番の生産終了予定 |
| 工事 | 配線・電源・高所作業。営業時間外の作業が含まれるか |
| 月額 | 保存日数、台数、契約年数。値上げの条件 |
| 保証 | 年数と範囲。現場への出張が含まれるか |
| 撤去・原状回復 | 既存カメラの撤去費。契約終了時の原状回復 |
撤去と原状回復は、見積から抜けやすい項目です。賃貸の物件では、退去時の原状回復まで含めて総額を見ておくと後で揉めません。
当社が扱う4ブランドの機器と保証の違いは取扱カメラのご紹介にまとめています。
8. よくある質問(FAQ)
Q1: 防犯カメラの耐用年数は何年ですか?
法定耐用年数は6年です。国税庁の耐用年数表で「器具及び備品」の「2 事務機器及び通信機器」にある「インターホーン、放送用設備」として扱われるためです。カメラ単体を光学機器とみると5年、建物に組み込む工事を伴うと建物附属設備として扱われることもあります。ただしこれは減価償却の計算に使う年数で、6年で寿命が来るという意味ではありません。
Q2: 6年たったら入れ替えないといけませんか?
年数だけを理由に替える必要はありません。判断は3つの状態で決めます。メーカーの生産終了後の対応期間を過ぎていないか、保証が残っているか、録画が止まっていないかの3点です。保証が残っていて録画も安定しているなら、6年を過ぎても使い続けて差し支えありません。逆に対応期間が終わった機器は、故障しても部品が無く直せません。
Q3: 法人向けAIカメラの初期費用はどれくらいかかりますか?
台数だけでは決まりません。カメラ本体・ライセンス・設置工事・ネットワーク・保守の5つの合計になります。価格を公開している例では、Safieがカメラ本体を50,600円から、クラウド録画プランの月額を1台あたり1,320円(7日間保存)から公開しています。見積のあいだで最も差がつくのは設置工事で、既存の配線を使えるかどうかで大きく変わります。
Q4: 既存のカメラを残したまま入れ替えられますか?
残せる場合があります。映像をまとめる側の機器がONVIFやRTSPに対応していれば、既存のカメラを新しい管理画面に取り込める構成があります。ただし対応をうたっていても、機能の一部しか使えないことがあります。全台の入れ替えを前提にした見積と、既存を残す前提の見積の両方を出してもらうと、差額で判断できます。
Q5: 月額費用を抑えるにはどうすればよいですか?
カメラごとに保存日数を変えるのが最も確実です。月額は保存日数にほぼ比例するため、全台を長期保存にすると費用がそのぶん増えます。出入口やレジは長め、事務所やバックヤードは短めに分けます。すでに運用しているなら、過去1年で実際に何日前まで遡ったかを確かめると、設定を短くできることが多くあります。
9. まとめ
防犯カメラの法定耐用年数は6年ですが、これは減価償却の計算に使う年数で、入れ替えの合図ではありません。
実際に入れ替えを決めるのは、メーカーの対応期間・保証の残り・録画が止まっていないかの3点です。とくに対応期間の起点が購入日ではなく生産終了日である点は、見積の段階でしか確認できません。
費用は台数だけでは決まらず、機器・ライセンス・工事・ネットワーク・保守の5つに分かれます。見積を比べるときは合計額ではなく、この5つを分けた明細で並べてください。既存のカメラを残せるかどうかで、総額は大きく動きます。
いま使っているカメラを残せるか、どこから替えるべきかの切り分けは、現地を見ないと判断できません。型番と設置年が分かる資料をお手元に用意いただければ、残せる範囲と入れ替えの順番をご提案します。お問い合わせからご相談ください。

