レコーダーの保証が切れた。更新の見積を取ったら、クラウド型を勧められた。ただ、月額がずっとかかる形に踏み切ってよいのか判断がつかない。カメラの更新時期に、この二択で止まる会社は多くあります。
クラウドカメラの解説記事は数多くありますが、「便利です」で終わっていて、どちらを選ぶべきかまでは書かれていません。実際に決めるには、自社の条件でどちらが噛み合うかが要ります。
本記事では、クラウドカメラとレコーダー型を乗り換えの判断という視点で比べます。向いている条件、向いていない条件、5年で見た費用の差、そして既存のカメラを残したまま移る手順までまとめました。
1. クラウドカメラとレコーダー型は、何が違うのか
違いは映像の置き場所です。ただし置き場所が変わると、運用と費用の形も一緒に変わります。
1-1. 置き場所は3つある
「クラウドか、レコーダーか」の二択に見えますが、実際には3つあります。
| 置き場所 | どういう構成か | 向く条件 |
|---|---|---|
| クラウド | カメラから映像をクラウドへ送って保存する | 拠点が複数ある。レコーダーを置く場所がない |
| カメラ本体 | カメラの中のメモリに保存し、必要なぶんだけクラウドへ上げる | 回線が細い。機器を減らしたい |
| 構内のレコーダー・サーバー | 従来型。建物の中の機器に保存する | 映像を社外に出せない |
クラウド型を名乗る製品でも、実際の保存先は分かれます。
Verkadaはすべてのカメラで30〜365日のオンボードストレージ(カメラ本体に内蔵された録画用のメモリ)を備え、カメラとクラウドの両方で映像を処理して保存する構成をとっています。Safieはクラウドに保存するプランと、カメラの内蔵メモリ(256GB・約30日間)に置くハイブリッドのプランを用意しています。
カメラ自身が映像を貯めるため、レコーダーを別に置く必要がありません。回線が切れているあいだも録画が続くのは、この構成だからです。
1-2. 見積書の「クラウド型」が何を指すかを確かめる
同じ言葉でも中身が違うため、見積を比べる前に保存先がどこかを1行で書いてもらってください。
カメラ本体に保存する構成は、回線が細い場所や、映像をできるだけ外へ出したくない場合に向きます。クラウドにすべて上げる構成は、拠点をまたいで見たい場合に向きます。この違いは月額にも工事にも効きます。
1-3. レコーダー型が消えるわけではない
クラウドが新しく、レコーダーが古いという話ではありません。映像を社外に出せない事情がある現場では、構内保存が唯一の選択肢になります。
官公庁の仕様や、取引先との契約で映像の保管場所が決まっている場合がこれに当たります。この条件があるなら、比較の前に構成が決まります。
1-4. クラウドカメラにも種類がある
つなぎ方と電源の取り方で分かれます。
| 種類 | 向く場所 |
|---|---|
| PoE(LANケーブルで給電と通信) | 配線ができる屋内・屋外。台数が多い現場 |
| Wi-Fi接続 | 配線を通しにくい場所。回線が安定していること |
| LTE内蔵 | 現場にネット回線がない。仮設や工事現場 |
| バッテリー・ソーラー | 電源が取れない屋外。駐車場や資材置き場 |
台数が多いならPoEが基本です。電源とネットワークが1本のケーブルで済み、コンセントの増設が要りません。屋外や離れた場所だけをLTEやソーラーで補う組み方もできます。
2. 法人がクラウドに乗り換える理由は3つ
機能が多いからではありません。運用の手間が減るからです。
2-1. 拠点をまたいで、同じ画面で見られる
店舗や事業所が複数あると、レコーダー型では拠点ごとに機器があり、見るたびにその拠点へ接続します。担当者ごとに手順が違い、引き継ぎのたびに設定を掘り起こすことになります。
クラウド型は拠点が増えても画面が1つです。どの拠点の映像も同じ手順で開けるため、本社の担当者が現地へ行かずに確認できます。
2-2. レコーダーの置き場所と保守が消える
レコーダーは、置き場所・電源・空調・鍵の管理が要ります。店舗のバックヤードに置いた機器が、棚の荷物で塞がって熱を持つのはよくある話です。
ハードディスクは消耗品で、数年ごとに交換が必要になります。レコーダーを持たない構成にすると、この交換と保守そのものが無くなります。
2-3. 機器の故障で、映像が全部消えない
レコーダー型で怖いのは、レコーダーが壊れたときです。カメラは無事でも、保存した映像がまとめて失われます。
盗難や火災でレコーダーごと持ち去られる、焼けるという事故も起こり得ます。映像を建物の外に置く構成は、この一点でレコーダー型より強くなります。
3. 乗り換えないほうがよい条件
クラウドが噛み合わない現場もあります。次のどれかに当たるなら、構内保存かハイブリッドを先に検討してください。
3-1. 映像を社外に出せない
契約や社内規程で映像の保管場所が決まっている場合、クラウドは選べません。この条件があるかどうかは、情報システム部門と法務に先に確認してください。導入の直前に判明すると、見積を一からやり直すことになります。
3-2. 回線が細い、または現場にネット回線がない
カメラの映像を常時クラウドへ上げると、回線に負荷がかかります。既存の業務回線に相乗りさせると、レジや受発注の通信に影響が出ることがあります。
回線が用意できない現場では、カメラ本体に保存する構成や、LTEを使う構成が現実的です。「クラウド型だから配線が不要」ではありません。電源とネットワークは、どの構成でも要ります。
3-3. 台数が多く、長い保存日数が必要
月額は台数と保存日数の掛け算で効いてきます。台数が多く、かつ長期保存が必須なら、5年の総額でレコーダー型が下回る場合があります。次の章で数字を並べます。
4. クラウドに映像を上げて、セキュリティは大丈夫なのか
社外に置くほうが危ないと考えがちですが、構内のレコーダーが安全だという前提のほうを先に確かめる必要があります。
4-1. 構内の機器が、そのまま安全とは限らない
総務省とNICTによるIoT機器の調査(NOTICE)では、2026年8月の観測で、IDとパスワードが容易に推測できる機器が月13,708件、重大な脆弱性のあるファームウェアを載せた機器が月2,151件見つかっています。マルウェアに感染していると推定される機器も、最大で1日299件観測されました。
カメラやレコーダーだけの数字ではありません。ただし、ネットにつながった機器を置きっぱなしにすると何が起きるかを示しています。初期パスワードのまま、ファームウェアを更新しないまま動いている構内の機器は、この調査の対象そのものです。
4-2. 見るべきは、置き場所ではなく更新のされ方
クラウド型は、ソフトウェアの更新が提供側で進みます。構内保存は、更新を自社か保守業者が計画して当てます。どちらが安全かではなく、更新を誰が続けるかで差がつきます。
保守契約にファームウェアの更新が含まれているかは、見積書で確かめられます。含まれていなければ、その作業は自社で持つことになります。映像が外へ漏れる経路そのものは防犯カメラを設置している人は全員注意!情報漏洩リスクと安全対策で扱っています。
4-3. サービス側に確認する3点
| 確認すること | なぜ要るか |
|---|---|
| 通信と保存の暗号化 | カメラからクラウドまでと、保存したあとの両方 |
| 権限と二要素認証 | 退職者のアカウントが残ると、映像を見続けられる |
| 操作の記録 | 誰がいつ映像を見たか、書き出したかが残るか |
3つ目が、社内の説明でいちばん効きます。映像を見た記録が残る仕組みは、プライバシーへの配慮を求められたときにそのまま回答になります。
5. 費用は、どちらが安いのか
初期費用だけを見ると答えを間違えます。費用の出方が違うため、5年ぶんの合計で並べる必要があります。
5-1. 初期に寄るか、月額に寄るか
| 初期費用 | 毎月の費用 | 数年後に出てくる費用 | |
|---|---|---|---|
| レコーダー型 | 大きい。レコーダーとハードディスク | 小さい | ハードディスクの交換、レコーダーの更新 |
| クラウド型 | 本体と工事。レコーダーは不要な構成がある | 保存日数と台数のぶん続く | 機器の更新のみ |
レコーダー型は最初にまとめて払い、あとから交換部品で出ていきます。クラウド型は毎月に分けて払います。どちらが安いかは、使う年数と保存日数で入れ替わります。
5-2. 公開されている価格で並べてみる
クラウド録画サービスのSafieは、料金を公開しています。
| 保存日数 | 月額(税込・1台あたり) | 10台の5年合計 |
|---|---|---|
| 7日間 | 1,320円 | 792,000円 |
| 30日間 | 2,200円 | 1,320,000円 |
| 90日間 | 3,300円 | 1,980,000円 |
| 365日間 | 7,700円 | 4,620,000円 |
カメラ本体は50,600円からと公開されています。保存日数を30日から90日へ延ばすだけで、5年の差は66万円です。台数と保存日数がそのまま総額に効くことが分かります。
5-3. 分岐点は「保存日数 × 台数 × 年数」
保存日数が短く、台数が少なく、拠点が複数あるほどクラウドが有利になります。逆に、台数が多く長期保存が必須で、拠点が1か所なら構内保存が下回ることがあります。
費用の内訳と見積書の見方は防犯カメラの耐用年数は6年|法人向けAIカメラの費用と入れ替え時期で詳しく扱っています。
6. 乗り換えるときの進め方
一度に全部を切り替える必要はありません。
6-1. 既存のカメラを残せるか確かめる
全台を入れ替える前提で見積もると、総額が跳ね上がります。まだ保証が残っていて録画も安定しているカメラは、残せる場合があります。
映像をまとめる側がONVIF(防犯カメラの相互接続の規格)やRTSP(映像を配信するための手順)に対応していれば、既存のカメラを新しい管理画面に取り込める構成があります。どこまで残せるかの見極め方は法人向けAIカメラ比較|4ブランドの選び方と既存防犯カメラの活かし方にまとめました。
6-2. リスクの高い場所から順に替える
出入口・レジ・金庫まわりを先に新しくし、駐車場や倉庫は次の年度に回す。管理画面が新旧のカメラを同時に扱えるなら、この分け方ができます。
全台を同じ時期に入れ替えると、数年後にまた全台が同時に更新時期を迎えます。分けて替えると、以降の更新も分散します。
6-3. 切り替えの当日、映像を途切れさせない
古いレコーダーを外してから新しい構成を立ち上げるまでのあいだ、録画が止まります。この空白を作らない段取りを、工事の前に確認してください。
古い映像をいつまで残すかも決めておきます。レコーダーを撤去すると中の映像は取り出せなくなるため、必要な期間ぶんは並行して残すか、書き出してから外します。
7. クラウドカメラを選ぶときに見る5点
製品ページには機能が並びますが、運用で効いてくるのは次の5点です。
| 見る項目 | 確認すること |
|---|---|
| 回線が切れたとき | 録画が続くか、それとも止まるか。復旧後に映像が埋まるか |
| 保存日数の変更 | 契約の途中でカメラごとに変えられるか |
| 権限の管理 | 店舗の担当者に、自店舗だけを見せられるか |
| 保存される場所 | 映像がどこの国のどの設備に置かれるか |
| 契約が終わるとき | 解約やサービス終了のときに、映像をどう取り出せるか |
いちばん見落とされるのが最後の1行です。プランの終了や値上げは起こり得ます。契約の前に、映像の持ち出し方を確認しておくと、数年後に困りません。
回線が切れたときの挙動も、製品によって分かれます。カメラ本体に保存する構成なら録画は続き、回線の復旧後にクラウドへ上がります。クラウドへ直接送る構成では、切れているあいだの映像が残らないことがあります。当社が扱う4ブランドの保存方式の違いは取扱カメラのご紹介にまとめています。
8. よくある質問(FAQ)
Q1: クラウドカメラとレコーダー型は、どちらを選ぶべきですか?
条件で決まります。拠点が複数ある、レコーダーの置き場所がない、機器の保守を減らしたいならクラウド型が噛み合います。映像を社外に出せない規程がある、回線が細い、台数が多く長期保存が必須ならレコーダー型か、カメラ本体に保存する構成が向きます。判断の前に、映像の保管場所に関する社内規程と契約条件を確認してください。
Q2: クラウド型は月額がかかり続けるので、結局は高くなりませんか?
使う年数と保存日数で入れ替わります。レコーダー型は初期費用が大きく、数年ごとにハードディスクの交換とレコーダーの更新が出てきます。クラウド型はその費用が無い代わりに月額が続きます。5年ぶんの合計で、機器・工事・月額・交換部品・保守を並べて比べてください。合計額だけの見積では、この差は見えません。
Q3: インターネットが切れたら、録画は止まりますか?
構成によります。カメラ本体にメモリを持つ製品は、回線が切れているあいだも録画を続け、復旧後にクラウドへ上げます。Verkadaはすべてのカメラで30〜365日のオンボードストレージ(カメラ本体の録画用メモリ)を備えています。クラウドへ直接送るだけの構成では、切れているあいだの映像が残らないことがあります。見積の段階で、回線断のときの挙動を確認してください。
Q4: いま使っているカメラを残したまま、クラウドに移れますか?
残せる場合があります。映像をまとめる側の機器が、ONVIFやRTSPというメーカーをまたいで機器をつなぐ規格に対応していれば、既存のカメラを新しい管理画面に取り込める構成があります。ただし対応をうたっていても、機能の一部しか使えないことがあります。全台を入れ替える前提の見積と、既存を残す前提の見積を両方出してもらうと、差額で判断できます。
Q5: 月額を抑えるには、どうすればよいですか?
カメラごとに保存日数を変えるのが最も確実です。月額は保存日数にほぼ比例するため、全台を長期保存にすると費用がそのぶん増えます。出入口やレジは長め、事務所やバックヤードは短めに分けます。公開価格の例では、10台を30日から90日へ延ばすと5年で66万円の差になります。
9. まとめ
クラウドカメラとレコーダー型の違いは映像の置き場所ですが、変わるのは置き場所だけではありません。拠点をまたいだ確認、機器の保守、故障時の映像の残り方が一緒に変わります。
選び分けの条件ははっきりしています。拠点が複数ある・レコーダーを置けない・保守を減らしたいならクラウド型、映像を社外に出せない・回線が細い・台数が多く長期保存が必須なら構内保存かカメラ本体保存です。
費用は初期費用ではなく、5年ぶんの合計で並べてください。保存日数と台数がそのまま月額に効くため、全台を同じ日数にしないだけで総額が下がります。
乗り換えは一度に全部でなくてかまいません。既存のカメラをどこまで残せるかは、型番と設置年が分かれば切り分けられます。資料をお手元にご用意のうえ、お問い合わせからご相談ください。

