棚卸で差異が出た。映像を見ようとしたが、その棚は映っていない。スーパーで防犯カメラを入れ替えるとき、この経験が出発点になることが多くあります。
スーパーは、ほかの小売と設計が違います。売場が広く、什器で視線が切れ、バックヤードでは値引きや廃棄の作業があり、外には駐車場がある。これらを別々に考えないと、台数を増やしても見たい場面が残りません。
本記事では、スーパーマーケットの防犯カメラを売場・バックヤード・駐車場に分けて設計します。レジまわりは設計の考え方が異なるため、本記事ではセルフレジを中心にポイントを紹介します。当社は複数のメーカーを扱うため、特定の1社に寄せずに書いています。
1. スーパーの防犯カメラは、ほかの店と何が違うのか
面積と、扱うものと、外を持っていることです。
1-1. 棚卸の差異は、原因が1つではない
先に押さえておきたいのが、棚卸で出る差異の中身です。
商品の持ち出しだけでなく、検品や発注の記録漏れ、値引きや廃棄の処理漏れ、レジの打ち間違いも同じ「差異」として出てきます。業界として公表されている内訳の統計は限られており、店ごとに構成が違うというのが実際のところです。
そのため、カメラの役目は犯人を探すことではなく、原因を切り分けることになります。売場・バックヤード・レジのどこで起きたかが分かれば、対策が防犯なのか業務の手順なのかが決まります。
1-2. 売場が広く、死角が構造的にできる
コンビニは店内を見渡せますが、スーパーは什器が高く、通路が長く、島陳列で視線が切れます。死角は運用の問題ではなく、売場のつくりから生まれます。
天井が高い店では、カメラから床までの距離も長くなります。同じカメラでも、映る範囲が広がるぶん1メートルあたりのピクセルが減るため、顔の判別が難しくなります。
1-3. バックヤードの作業が、売場と別物
生鮮や惣菜のバックヤードでは、検品・加工・値引き・廃棄の作業があります。商品が「売れずに減る」経路が、売場より多くあります。
ここは撮り方に配慮が要ります。従業員の作業をずっと映す形にすると、目的が防犯から外れます。出入りと、商品が動く場所に絞るのが実務的です。
1-4. 駐車場という、もう1つの店舗
駐車場は敷地の中ですが、店内とは別の設計が要ります。屋外で、距離が長く、夜間は暗く、動いているものを撮ることになります。
当て逃げの申し出やカートの持ち出しは、ここでしか記録できません。
2. 売場は、狙われる棚から押さえる
全売場を隙間なく覆う必要はありません。
2-1. 単価と大きさで、優先順位が決まる
持ち出されやすいのは、単価が高く、小さく、値札を外しやすいものです。スーパーなら、酒・化粧品・医薬品・電池など、店舗ごとに差異や持ち出しが発生しやすい商品が優先候補になります。
この棚を先に押さえてから、残りを考えてください。全売場を均等に撮る構成は、どこも中途半端になります。
2-2. 島陳列とエンドが死角をつくる
季節の島陳列やエンドは、設置したときの図面に無い死角を作ります。通路の見通しが変わるためです。
売場の変更が多い店では、改装や大きな売変のたびに映像を確認する運用にしておくと、気づかないまま死角が残ることを防げます。
2-3. 通路は、突き当たりから撮る
通路の途中に付けると、カメラの真下が映りません。通路の端から、通路の長さ方向に向けて撮るほうが、同じ台数で見える範囲が広がります。
棚の上部から斜めに見下ろす角度にすると、手元の動きが残ります。真下を向いた設置は、人がいることは分かっても何をしたかが分かりません。
3. バックヤードと搬入口
売場より台数は要りませんが、外しにくい場所が3つあります。
| 場所 | 何を残すか |
|---|---|
| 搬入口 | 納品と返品の出入り。業者の車と人 |
| 検品・加工の場所 | 商品が箱から出て、売場に並ぶまで |
| 従業員の出入口 | 誰がいつ出入りしたか |
値引きと廃棄の作業場所も、記録が残ると説明が楽になります。廃棄したはずの商品が無い、という差異は、映像が無いと原因を切り分けられません。
ここでも、狙いは作業の監視ではありません。商品が動く場所と、人が出入りする場所に絞ってください。
4. 駐車場では、何を撮っておくべきか
店内とは別の条件がそろいます。
4-1. 車のナンバーを読むには、専用の設計が要る
当て逃げの申し出に応えるには、ナンバーが読める映像が要ります。ところが、駐車場全体を1台で見渡す構成では、まず読めません。
監視カメラの国際規格(IEC 62676-4)には、目的ごとに必要な画素密度の目安があります。DORIと呼ばれる考え方で、顔の幅を16cmと置いて算出されたものです。
| 目的 | 画素密度 | 駐車場での使いどころ |
|---|---|---|
| 検知 | 25 px/m | 人や車がいることが分かる。見渡し用 |
| 観察 | 63 px/m | 車種や色、動きが分かる |
| 認識 | 125 px/m | 知っている人・車かどうかが分かる |
| 識別 | 250 px/m | 人物などを識別するための目安 |
見渡し用と、出入口を狙う用を分けるのが現実的です。車が必ず通る入口と出口は、ナンバーを確認できる画角・画素密度を確保する専用カメラとして設計すると、台数を抑えながら必要な映像を残しやすくなります。
4-2. 夜間と逆光で、昼と同じようには映らない
駐車場は照明が届かない場所が残ります。カタログ上の解像度や性能だけでは、実際の映像品質を判断できません。特に夜間や逆光、動きのある場面では見え方が変わります。
夕方の逆光と、夜間の照明の下で、それぞれどう映るかを確認してください。可能なら、設置前に同じ機種を現地で試写してもらうのが確実です。
4-3. カートとカゴの持ち出し
駐車場の外周と、敷地の出口が経路になります。全体は検知レベル(25 px/m)を一つの目安とし、車が必ず通る入口と出口には、より高い画素密度を確保した専用カメラを配置します。
5. セルフレジが増えると、押さえる場所が変わる
セルフレジは、レジ係の目が無い状態で商品が精算を通る仕組みです。有人レジと同じ設計では足りません。
5-1. セルフレジの種類によって、押さえる場所が変わる
セルフレジには、商品登録を従業員が行うセミセルフレジと、商品登録から決済までを利用者自身が行うフルセルフレジがあります。
フルセルフレジでは、商品をスキャンする手元と、スキャン後に袋やカゴへ入れる動きを確認できる画角が重要です。
一方、セミセルフレジでは、商品の登録は従業員が行うため、支払い操作や精算機まわり、商品の受け渡しが確認できる画角を検討します。
どちらの場合も、レジだけを切り取って見るのではなく、必要に応じて売場や出口までの動線をつなげて確認できるように設計します。
5-2. レーンごとに1台ではなく、並びをまたいで撮る
セルフレジは数台が並びます。1台ごとに真上から撮ると、どのレーンも手元が見づらくなります。
斜め前方から複数レーンをまとめて見下ろし、スキャン台と袋詰めスペースの両方が確認できる画角を検討します。そのうえで、レーンの並びの端から反対向きにもう1台を置くと、体で隠れたときの補完になります。
5-3. 声かけをするなら、前後がつながっている必要がある
精算されていない商品について声をかけるには、手に取る場面・精算を通らなかった場面・店を出る場面がつながって残っていることが要ります。
セルフレジの手元だけが映っていても、その前後が切れていると説明が成り立ちません。売場・セルフレジ・出口の3点がそろって初めて使えます。
6. レジまわりは、別に設計する
レジは距離が近く、必要な画質も角度も売場と違います。手元が映る角度かどうかがすべてで、天井から真下を向いただけでは札の受け渡しが残りません。
レジの台数だけでカメラ台数を決めるのではなく、レジ操作と金銭・商品の受け渡しが確認できる画角を基準に設計します。詳しくはレジの不正・トラブルを防ぐ監視カメラと設置ポイントにまとめています。
7. 映像を証拠として使うときに要る条件
台数と画質がそろっていても、次の2つが欠けると使えません。
7-1. 一連の流れが、途切れずに残っていること
必要なのは「その瞬間」ではなく、手に取る → 精算を通らない → 店を出るという流れです。どこか1つでも欠けると、説明が成り立ちません。
設計の段階で、この3点を1本の線としてたどれるかを図面の上で確かめてください。台数ではなく、つながりの問題です。
7-2. カメラどうしの時刻が合っていること
複数のカメラをまたいで流れを追うとき、それぞれの時刻がずれていると順序が狂います。数秒のずれでも、レジを通った前か後かが逆に見えることがあります。
機器の時刻は放っておくと少しずつずれます。時刻を自動で合わせる設定(NTP)が入っているかを、導入時に確認してください。製品や構成によって時刻同期の方法は異なるため、導入時に同期方法を把握しておくことが大切です。
7-3. 書き出したときに、日時が残ること
映像を外部へ提出する場面では、日時が焼き込まれているか、書き出したファイルに記録が残るかが問われます。画面では日時が見えても、書き出すと消える製品があります。
導入前に、実際に1本書き出してもらって確かめてください。
8. 保存日数は、棚卸の間隔から逆算する
スーパーで保存日数を決めるとき、基準になるのは棚卸のサイクルです。
商品の持ち出しは、その場で見つかることのほうが少なく、棚卸で差異が出て初めて分かります。月次棚卸の場合、30日保存では、差異を発見した時点ですでに必要な映像が上書きされている可能性があります。
月次で棚卸をしているなら、45〜60日は見ておいてください。差異が出てから映像を確認するまでに数日かかるためです。
全台を同じ日数にする必要はありません。売場と出入口は長め、事務所は短めと分けると、月額を抑えたまま必要な期間を確保できます。考え方は店舗の防犯カメラ|業態別の置き方と台数・保存日数の決め方で詳しく扱っています。
9. 撮ってよい場所と、配慮が要る場所
9-1. 撮れない場所
トイレ、更衣室などプライバシー性の高い場所の内部には、原則として防犯カメラを設置しません。必要に応じて、出入口や周辺などプライバシーに配慮した位置を撮影します。
9-2. 従業員が映る場所
バックヤードと事務所は撮れますが、従業員の作業を常時撮影する場合は、防犯という目的だけでなく、何のために撮影するのかを明確にしておく必要があります。防犯目的であれば、出入りや商品が動く場所など、目的に必要な範囲に絞るのが実務的です。
設置の前に、どこに何台を、何のために置くかを従業員へ説明しておくと、運用が始まってからの摩擦が減ります。
9-3. 利用目的を決めておく
個人情報保護委員会は、防犯カメラについて「利用目的をできる限り特定し、当該利用目的の範囲内でカメラ画像を利用しなければなりません」としています。
「防犯のため」で止めず、商品の持ち出しの確認、レジの差異の確認、事故の記録のように、使う場面を書き出しておいてください。販促や分析など別の目的に使うなら、その時点で扱いが変わります。
10. よくある質問(FAQ)
Q1: スーパーに防犯カメラは何台必要ですか?
面積ではなく場所から決めます。単価が高く小さい商品の棚、出入口と搬入口、バックヤードの商品が動く場所、駐車場の出入口。まずはこの順に検討し、その結果として台数が決まります。全売場を隙間なく覆う必要はありません。売場の変更が多い店では、改装のたびに死角ができていないかを確認してください。
Q2: 駐車場で車のナンバーを読むには、どうすればよいですか?
駐車場全体を1台で見渡す構成では、ナンバーまで確認するのは難しくなります。見渡し用と、ナンバーを確認する用を分けてください。全体は検知レベル(25 px/m)を一つの目安として見渡し、車が必ず通る入口と出口には、識別レベル(250 px/m)を一つの目安として、十分な画素密度と画角を確保したカメラを配置します。夜間や逆光でどう映るかは、設置前に現地で試写して確かめるのが確実です。
Q3: バックヤードにカメラを置いても問題ありませんか?
置けます。ただし防犯という目的だけでなく、何のために撮影するのかを明確にする必要があります。搬入口、検品や加工の場所、従業員の出入口のように、商品が動く場所と人が出入りする場所に絞ってください。設置の前に、どこに何台を何のために置くかを説明しておくと、運用が始まってからの摩擦が減ります。
Q4: 映像は何日ぶん残せばよいですか?
棚卸の間隔から逆算します。商品の持ち出しは棚卸で差異が出て初めて分かるため、保存日数が棚卸の間隔より短いと、気づいた時点ですでに必要な映像が上書きされている可能性があります。月次で棚卸をしているなら45〜60日が目安として検討します。全台を同じ日数にする必要はなく、売場と出入口を長め、事務所を短めに分けると月額を抑えられる場合があります。
Q5: 島陳列を変えたら、カメラも変える必要がありますか?
カメラの移設までは必要ないことが多いものの、確認は要ります。季節の島陳列やエンドは、設置時の図面に無い死角をつくります。売場の変更があったら、実際の映像を開いて、狙っていた棚がまだ映っているかを確かめてください。画角を少し振るだけで済む場合がほとんどです。
Q6: セルフレジには、どんなカメラを置けばよいですか?
セルフレジには、商品登録から決済までを利用者自身が行うフルセルフレジと、商品登録は従業員が行い、支払いを利用者が行うセミセルフレジがあります。フルセルフレジでは、商品をスキャンする手元と、スキャン後に袋やカゴへ入れる動きを確認できる画角が重要です。一方、セミセルフレジでは、支払い操作や精算機まわり、商品の受け渡しなど、確認したい場面が映るように設計します。
カメラはレーン数だけで決めるのではなく、必要な操作や手元が確認できる画角を基準に配置します。必要に応じて、売場・セルフレジ・出口の映像をつなげて確認できるようにすると、前後の状況も追いやすくなります。
11. まとめ
スーパーの防犯カメラは、売場・バックヤード・駐車場を別々に設計します。同じ考え方で並べると、どこも中途半端になります。
売場は単価が高く小さい商品の棚から押さえ、通路は突き当たりから長さ方向に撮ります。バックヤードは商品が動く場所と人の出入口に絞ります。駐車場は見渡し用とナンバーを狙う用を分けると、台数を抑えたまま必要な映像が残ります。
保存日数は棚卸の間隔から逆算してください。月次棚卸の場合、30日保存では、差異を発見した時点ですでに必要な映像が上書きされている可能性があります。
いまの売場図面と、直近で「映っていなかった」場面が分かれば、どこが抜けているかを切り分けられます。お問い合わせからご相談ください。当社が扱うカメラは取扱カメラのご紹介にまとめています。

